小型ゲームマシン『Playdate』感想 - レトロだけど新しい、“クランク”のついた携帯ゲーム機

先週末に届いた小さな小包に入っていたのは『Playdate』という小型ゲーム機だった。予約してから1年3か月、ときどき思い出して「まだかな…」と思ってはすぐに忘れることを繰り返していたが、やっと手元に届いた。とはいえ今週末には『メガドライブミニ2』、11月に入ればすぐ『ソニックフロンティア』、チェックしたい動画配信は渋滞中…とコンテンツ消化に忙しいタイミングに届いてしまったのだが、こんなに面白そうなものを温めておくわけにはいかない。持ち歩いて隙間時間に楽しむとしよう。

『Playdate』をリリースしたのはアメリカのPanic inc.。主にMac用のアプリケーションを開発している会社で、Web制作をやっているMacユーザーにはFTPアプリ『Transmit』あたりが有名なんじゃないかと思う。僕もMacをメインに使ってた頃はかつて同社がリリースしていたテキストエディタ『Coda』を使用していた。一方で近年はゲームのパブリッシングも行っており、『Untitled Goose Game 〜いたずらガチョウがやって来た!〜』などの販売を手掛けている。

そのPanic inc.が、2019年に突然ゲーム機を発表した。手のひらサイズの正方形に近いボディに十字キーとABボタン、バックライトのないモノクロ液晶…と、ぱっと見は「縦に潰した小さなゲームボーイ」だったけど、本体側面にはあまりゲーム機では見かけない入力デバイス”クランク”が付いていた。加えてこのクランクをくるくる回して遊ぶゲームを複数のデベロッパーが開発中とのこと。小型ガジェットと珍ゲーが好きな僕の血が騒いだ。

その後しばらく経った2021年7月、プレオーダーが始まった。本体価格179ドルは当時の円相場で約19,600円、送料込みで約25,000円だった。近所の店に行けば新品のSwitchライトとソフトが1本買える値段だ。仮に内部のチップが高性能だったとしても出力するのは400×240ピクセルのモノクロ1ビット液晶で、テクノロジー面でのゲーム体験としてはゲームボーイに毛が生えた程度だろうし、コンセプト的にも大作は期待できないだろう。でもいいのだ、このちっちゃくてよくわからんゲーム機を手に入れてニヤニヤしながらクランクを回したいのだ。かつてニンテンドーDSのタッチ操作やWiiのモーションコントローラーがそうであったように、新しい入力手段が標準搭載されたゲーム機にはその入力手段を無理矢理活用しようとするゲームが出てきて楽しいのだ。この先ソニーやマイクロソフトはもちろん、任天堂だってクランクを標準装備したゲーム機なんてたぶん出さないだろう。などと考えながら深夜2時の予約開始前にはPCの前に正座し、争奪戦に参加した。慣れない英語のショッピングカートに戸惑い、「栃木県ニハ配送デキナイヨー」という謎のエラーに苦しめられながらなんとか予約はできたものの、発送の順番はかなり遅くなってしまった。で、やっと手元に届いて本日に至る。

そんなわけで開封の様子と簡単な感想をお届けしたい。まずは外箱、本体と同じ元気いっぱいのビタミンイエローでこれまた元気よく太めのゴシック体で大きく「Playdate」のロゴ。疲れたアラフォーおじさんにはその元気が眩しい。本体が斜めに収まっているのもおしゃれで細かいところにこだわりを感じる。

Playdate外箱

中身はPlaydate本体と、付属品のUSB Type-A⇔Type-Cケーブル、簡単な説明書の3点。最近の標準的なガジェットと同じような構成。USBケーブルまで黄色いのがすごい。

Playdateと付属品

手に持つとこんな感じ。若干縦長だけどほぼ正方形。横幅は最近のiPhone(13とか14)よりもほんのちょっと大きい。このぐらいなら「手のひらにすっぽり」と言えるサイズ感なんじゃなかろうか。厚さも最近のスマホと同程度でフラットなつくり、グリップ的なものはないのでゲームをするときに持ちやすいわけではないけど、配信されるタイトルがほとんどミニゲームなら問題はなさそう。

Playdateサイズ感

正面には十字キーとABボタン、カチカチとクリック感がありやや硬め。画面右側の上部には他のゲーム機で言うところのスタートボタンやホームボタンのような役割のメニューボタン、その下がモノラルスピーカー、最大音量にすると静かな場所ならうるさいぐらいの音が出る。

Playdate正面

ハード面で一番興味深かったのは実はクランクじゃなくて液晶。最初は液晶じゃなくて白黒の電子書籍端末なんかで採用されているE-inkディスプレイかと思ったぐらいコントラストがはっきりしていて美しい。周囲が明るいほど液晶も見やすく、直射日光の下でもしっかり遊べる。気軽に持ち運べるサイズ感に元気な本体カラー、ついでにむしろ屋外の方がはっきり見える液晶なんて、どこまで「お外」が似合うんだ、Playdate。

本体底側にはマイク、イヤホンジャック、USBコネクタ(Type-C)が並ぶ。イヤホンジャックは4極でヘッドセットも使える。今後マイクを活用したゲームも出てくるんだろうか。

Playdate底側

本体上側にはスリープ/スリープ解除ボタン。スリープ時は1回、解除時は2回押す。ちなみにスリープ時も画面が完全に消えるわけではなく、時計が表示されるようになっている。公式によると満充電なら時計を表示したスリープ状態で14日ぐらいバッテリーが持つらしい。

Playdate上側

本体右側面にはPlaydateのアイデンティティであるクランク。持ち手が本体の溝に収納できるようになっていて、持ち運びのときに邪魔にならない。小さいけれど意外と回しやすく、こちらはボタンと違ってクリック感はなくスルスルとスムーズに回り、手を離すと惰性で回ることなくピタっと止まる。本体を手に持っているとゲームをしていなくてもとついつい回したくなる良い感触。

Playdateクランク

加えて公式のスペック表によると3軸加速度センサーとBluetoothも内蔵されてるっぽい。加速度センサーの動作は設定画面で確認できるのでこれも今後配信されるゲームで活用されるんだろうか?Bluetoothは設定画面に何も表示されていないので、今のところユーザーがイヤホンとかを接続することはできなさそう。

続いて肝心なゲームの話、ハード面のことばかり長々と書いてしまったが重要なのはこっちである。Playdateは購入後にWi-Fiに接続してユーザーアカウントとの紐づけが完了すると、12週にわたって毎週2本ずつ、計24本のゲームが配信される仕組み。つまり僕の環境だと2023年の1月半ばぐらいまで毎週2本ずつ増えていくということだ。とりあえず、今インストールされている2本を簡単に紹介しておこうと思う。

Whitewater Wipeout

Whitewater Wipeoutスクリーンショット

スコアを競う残機制の超シンプルな波乗りゲーム。クランクを回すとサーファーが動き出し、波に乗ったりトリックを決めたりする。画面右側から迫る大波から逃げるように左に向かって波乗りしながらトリックを決めると点が入り、波に乗れなかったりトリック後に着水に失敗したりすると残機が減る…というゲームらしい。

Whitewater Wipeoutスクリーンショット

取っ掛かりの難易度が高く、慣れるまではものの数十秒でゲームオーバーになってしまうが、コツを掴んでしまえばそこそこ楽しい。クランクもただグルグルと回すだけでなく、アナログスティックのようにゆっくりと前後に傾けるような操作もあって楽しめた。
Playdateを手に入れて最初にプレイするゲームとしてはちょっと難しい気がするが、クランク操作の楽しさは伝わるし、タイトル画面の水しぶきの演出やゲーム中結構滑らかにぬるぬる動くサーファーの描画ではPlaydateの意外な性能の高さを感じられる良い1本だと思った。

Casual Birder

Casual Birderスクリーンショット

鳥の写真を撮るアドベンチャーゲーム的なもの…なのか?見下ろし視点のフィールドは『MOTHER』などを思い起こさせる。

Casual Birderスクリーンショット

開始早々おじいさん的なキャラクターがチュートリアルと思われることを話し始めるも、英語力の絶望的な僕にはほとんど理解できなかった。故に何をしていいかもわからず数分で終了…。申し訳ないけど感想を書くにも至らなかった。

Playdateは今年の4月頃から発送が始まっているので、既に24本すべてをプレイした人もたくさんいるのだろう。検索すればレビューや動画はたくさん出てきそうだけど、何も情報を仕入れずに配信を楽しみに待つのがこのゲーム機の嗜みのような気がする。今後配信されるゲームの感想は、ある程度まとまったらまた記事にしたい。

加えてPlaydateでは開発環境が公開されており、自作のゲームを配布・販売をしている人もいるらしい。そういうのもちょっとずつ調べていきながら、楽しいゲームをたくさんインストールして自分好みのゲーム機に仕上げられたらと思う。

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